映画:古の王子と3つの花(監督:ミッシェル・オスロ)


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ミッシェル・オスロのアニメーションである。『キリクと魔女』や『アズールとアズマール』が素晴らしかったので追いかけているのだが、前回の夜のとばりの物語に続き今回も長編ではなく3つの話のオムニバスのパターンで、このパターンは単純なお話になることがあって今回はちょっと子供向けかなという感じであった。

氏のアニメーションにはカラーの背景に黒抜きされた切り絵のような人物が動くものと、人物まですべてカラーのカラフルなものがあって、どちらも美しいのだけど黒抜きのほうが舞台のように背景が動かない場合が多いので情報量が制限されてより寓話的になり、フルカラーはとにかく眩しいほど豪華絢爛な色彩の乱舞で物語を描き出す。

CGで手間と金をかければなんでも作れる時代にあって、ミッシェル・オスロのアニメーションは動きは硬いし背景も抽象的かつ普遍的な記号のようである。飛び出す絵本や屋台の人形劇のようなイメージだ(まさにそういう表現もある)。

これがまた古代エジプト美術と相性がよくて、第1話の「ファラオ」ではまるで壁画が動き出したような趣があって笑ってしまった。毛並みまで再現するリアルな3Dではなくあくまでも平面の美しさを追求した時代錯誤ともいえるような手法だが、これがまあとにかく美しいのだ。