電話番の苦悩

会社にビデオレンタル店から電話が掛かってきた。
社長がDVDを四本借りたまま返却していないという。携帯に電話しても出ないので、業を煮やして会社に掛けてきたらしい。今日で延滞料が二万二千八百円だそうだ。
前にも似たようなことがあった。そのときはコイン駐車場に自動車を停めっぱなしにした。そこの管理人が死体でも入ってるんじゃないかと気味悪がって、警察に通報したもんだから、いきなり会社に国家権力の手先から連絡がきたのだった。
そういう人だ。
そんな社長がDVDを借りパクしようが、車をレッカーされようが、他人事なのでどうでもいい。
でも、件のレンタル店は大手チェーン店ではなく、個人経営のアットホームなお店らしく、困惑しきって電話してきている。忙しいなら受取りに行くとまで言う。
可哀相なので邪険に扱ったりはしない。自然な流れで、本人が留守の場合「じゃあ、伝言お願いします」ということになる。
この「伝言」というのを聞くことになると、何故か大抵それまでの経緯を順を追って話してくれる。こう言ってくれれば判るから、と本当に伝言だけの人もいるが、仕事以外の用件で掛けてくる人は、十中八九説明し始める。お金に関係することなら、訊かなくても金額まで教えてくれる。
私はというと、事情を説明されれば聞くことは聞くが、それをもとに本人へ勧告したりはしない。どんなに文句を言いたくなっても、それは社員の職分から外れるし、お為を思ってやる義理もない。電話が来た事実と、伝言の要点を伝えるだけだ。
ふと気がついたんだが‥‥これはもしや、社長の超個人的な迷惑行為の苦情処理をしてるということなのか?
なんだかなぁ、ムカツクわ〜。