読了:太陽の塔(森見登美彦)

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!
裏表紙より

京大農学部の「休学中の五回生」が志高く、妄想たくましく、青春のトンネルを這い回る。
振られた元恋人を観察・研究し、それについての論文を何本もものにし、フィールドワークも欠かさない。いつものように彼女のマンションの前で待っていると、貧相な顎鬚の若者に、彼女に付き纏うのを止めるよう注意される。しかしこれは研究であって断じてストーカー行為などではないのである。とはいえ、官憲に問い詰められたら、そのことを納得してもらえるように説明できる自信はない‥‥。
ファンタジーノベル大賞を受賞しているのだそうだが、私にはわりに古風な現代小説に思えた。古風な現代ってのも訳が判らんが、「正統な日本の小説らしい小説」というものがあるとすれば、その一例じゃないかな。あくまでも一断面であるとお断りしておくけども。
豊富な語彙力と突飛な諧謔で余計なものを巻き込みつつ、バリバリと驀進していく感じ。これといった結末を迎えるわけじゃないんだが、読後感は爽やかでええじゃないか。こういうのも好きだ。
ところでゴキブリキューブって‥‥?