自転車効果

自転車を買ってからこっち、片道たった3.5kmだけれども2駅分を自転車で通勤している。坂道はあるものの2〜30分もかけてチンタラ漕いでいる。ところがそれだけでも体調が劇的に復活してきて自分でも驚いた。あれだけダルいの眠いの風邪ひいたの鼻水が止まらないのと騒いでいたのが嘘のようである。鼻水はアレルギー性鼻炎なので関係ないがな。やはり私の生活に足りなかったのは『ヒィーハァー!』だったか。
漢方薬を飲んだり酒を控えたり外食を減らしたりいろいろ試してはみたが目に見えては改善しやしなかったしつこいダルさが、自転車を少し漕ぐ、たったこれだけで解決してしまった。しかも2週間という短期間でである。なによりもかによりも判りやすくそれ以上でも以下でもなく端的に、運動不足だったわけである。なんのこっちゃ。これまでもウォーキングや腹筋などはしていてもあまり効果がなかったのは、ある程度激しい運動じゃなきゃダメだったってことだろうな。いつでも誰でもそうかというと、体質やら状況やらでいろいろなんだろうけども。どうせなので身体が馴れてきたら、ひと駅ずつ距離を伸ばしていこうと野望をあたためているところである。
息が切れる運動というのは最初にやってくる苦しさがツライ。あれを乗り越えてしまうと不思議と身体を動かすのが楽しくなってくるのだが、そういうのをランナーズハイというのだろうか。筋肉に乳酸が貯まり、肺が酸素を求めてあえぎだす。ある時点でエネルギー反応が始まってしまえば、ギアが入るように回りだすので楽になる。私は子どもの頃から長距離が得意なほうだったので、わりと馴染みのある感覚である。
苦しいのが気持ちいいというところがマゾっぽいという評もあるが、それをいっちゃうと私はシナプスが発光するような感覚が好きで、社会人なのに受験用の問題集を買ってきてわざと苦手な数学の問題を解いていたこともある。2〜3問でもドリルをやった日は寝てから見る夢がミステリ風になったりして楽しかった。だからといって別に頭を使う知的な作業をこなせるようになるために努力しているわけではなく、むしろプリミティブな肉体の器官として脳を働かせるのも運動するのも同じような遊びなんである。たぶん数独でもパズルゲームでもいいんだが、強い刺激を求めた結果が問題集だったのだ。そのくせ推理小説にはあまり燃えないのは自分でも不思議だ。ちなみに数字が前よりも理解できるようになったかというと、そんなことはまるでない。
刺激を、もっと刺激を! 映画館の大きな画面で迫力ある映像を見るのも、展覧会で究極の技法を認知するのも、ライブやクラブで大音量の音の粒を浴びるのも、ゲームの世界にのめりこむのも、どれもより質の高い快楽の刺激を求めてのことである。高邁なことを言ったりエラそうに一席ぶったりしたとしても、結局、人間は楽しいことしかやらないんだよな。