瓶ビールの王冠でピン

外国ビールを好んで飲むようになってから、なんとなく部屋の中に瓶ビールの王冠が溜まっていた。
店でボトルを注文すると、専用ジョッキに注いでから瓶と王冠も添えて出してくれるところがけっこうある。構成する全てが販促品なのだな。ジョッキは什器備品なので持って帰っちゃダメだが、瓶と王冠については大丈夫。特に王冠は小さいので酔っ払ってときどきポケットに入れてくることがある。そういうのが机の片隅にジャラジャラしていたのだ。見た目も楽しいのでなんとなく捨てそびれていたのだが、まとまりが悪くて微妙に邪魔だしこのままとっといてもしょうがないのでなんか加工することにした。バッヂにしようか迷ったけども、ピンのほうが居場所がありそうだったのでこうなったのだった。

よく見ると同じのが1組だけある。日本のビールもあるよ。

最初は手前に写っている三日月の王冠に心を射抜かれたんだよな。なんて銘柄だったか忘れちまったが。
そしてデザインは本当にそれぞれである。手前右側のロシュホール10番なんか脇にまで数字をいれる凝りようだし、色つきで紋章を象ったものあり、詳しい銘柄名まで明記してあるのもあり、ラベルと同じ絵が描いてあるもの、ロゴの頭文字だけ、果ては一色ベタ塗りに製造年月日が刻印してあるだけのものまで。もっとも、色も記号なのでシンプルながらひと目で種類が判る仕様になっているようだ。
当然だが飲むときには栓抜きであけるので、どうしても王冠自体が曲がったり傷がついたりする。お店のスタッフでもわざわざ傷つけないようにあけてくれる気ぃ遣いもいるが、まあ所詮は瓶の栓である。今回はひどく曲がっていたのは裏から少し叩いて戻したけど、こういうものだし多少の傷はそれはそれでいいじゃんね。

コルク粘土を丸めて手持ちのプッシュピンを埋め込み、多用途用接着剤で王冠の裏に貼り付けた。なんでコルク粘土なのかというと、単に手元にあったからである。何を作ろうとして買ったんだっけ。たぶん店先で見て面白そうだったんだろうな。コルクは乾いても柔らかくてグラつくので、用途的にはしっかり固まる紙粘土などのほうが合ってると思う。


ヨーロッパのボトルビールは歴史が古い。そもそもビールの歴史を遡ると人類初の文明・メソポタミアはシュメール文明までいきつくらしい。かのハムラビ法典にも『ビールを水で薄めたものは水の中に投げ込まれる』などとビールに関する法律が記されているそうな。
薀蓄はさておき、有史以来人類にずぅっと親しまれてきたビールは、中世近辺の修道院あたりで品質の高いものが作られるようになり、坊さんたちその他の収入源になっていたようだ。まあ作っているのは修道院だけではないしとかなんとかそのへんは長く煩雑になるので興味があったらぐぐるがよろし。それくらい古いものなので、瓶もそれぞれがローカルで勝手に作った形をしていたりする。いまでこそよくある大手メーカーの流通品なんてものがない時代から作られているからな。時代の変遷があったりしつつ、頑固なヨーロッパ人が昔ながらの手法と伝統を守っている醸造所もままあるようで、瓶やそれについている王冠もデザインが様々で眺めていると楽しいんだな。

そしてドサクサ紛れに、私が一番好きな銘柄はこれである。ドゥシャス ド ブルゴーニュ、ベルギーはフランス国境に程近いフィヒテにあるヴェルハーゲ醸造所のレッドビール。ブレンドビールでもある。通販で買えるよ。