里芋の押し焼き

里芋がたくさん出回る季節である。種類によっては海老芋やらこいもやらいう。ほっくりねっとりした食感と土を食べているような香りが滋味深く、ちょいと小ぶりなのをころころと煮て甘辛くしたのもいいし、立派に育った真っ白な断面をすぱっとみせるのもいい。食べ方はいろいろあるけども一番美味いのは衣かつぎにして塩だといままで思っていたのだが、押し焼きというのをふとやってみたらこれが滅法香ばしくて堪らない。里芋の食べ方暫定一位にずずぃっと割り込んできた。

芋を皮のまま楊枝が通るほどに煮て、熱いうちに皮をむき2cmくらいの輪切りにしたら、片栗粉をまぶして油をひいたフライパンで両面をこんがり焼く。焼くときにへらなどで半ば崩すように押し付ける。焦げ目がついたら皿にとり、あつあつのところにちょちょっと生醤油を垂らして口へ放り込むと、香ばしさとねっとりほっくり加減とが絶妙な塩梅である。少し崩しておくのがまた、食感を好くするのだろうな。殊に芋もちがお好きな向きには好適と思われる。シンプルかつ素朴な味わいは意外と贅沢だ。


今週いっぱいくらいは余裕のない予定であるので、こうして簡単なメニューの紹介で場を繋ぎお茶を濁しておく。記事がまるで素敵ミセスだわ、とひとり悦に入りつつ、実際はパサついた髪を振り乱し浮き出た隈の上で寝不足の目をギラつかせているのだった。