映画:コンテイジョン(監督:スティーヴン・ソダーバーグ)


試験明けレイトショー第2弾で行ってきたのだが、思い切り風邪をひいている真っ最中で咳を我慢しながら観たのが、また格別であった。
香港出張からミネソタへ帰ってきた女性が詳細不明の感染症で死亡する。そこから未知のウィルスが世界を席巻していく様が、ストレートに緻密に描かれていく。ひとつひとつの細かいエピソードの積み重ねが非常にリアルである。
ネットの動画からパニックが始まり、政府や研究筋のバッシングが起こり、民間療法のデマが広がっていく際の厭な空気は、震災からこっちの日本の有様をリアルタイムで目撃した者としては深々と首肯せざるを得なかった。
感染率が20%程度で、これくらい恐慌が広まるのだなというのは、新鮮な驚きだった。ウィルスに触れても発病しない人間のほうが多く、冒頭の女性の夫であるミッチもそのうちのひとりだ。しかしそれでも人々はパニックにかられ、ちょっとした煽りで疑心暗鬼に陥り、暴動を起こし、怪しげな民間薬に縋ろうとする。ミッチは状況から明らかに免疫があると判明したけども、たいていの人は自分に耐性があるのかどうかは判らない。「目に見えない」「判らないこと」がどのように恐怖心を煽るのか実例を見聞きし自分も体験した後では、さもありなんとも思える。怖いものは怖い。もっとも、途中からウィルスはより感染力の強い方向へ変異してしまうのだけど。
途中経過は最低限の叙情で出来事を積み重ねていくのだが、それが否応なしに緊張感を高めていく。目の前に死体が積み重なるギリギリの綱渡りをしているときには、泣いたり喚いたりしている暇などないというようだ。そうして最後の最後に少し気が緩んだとき、ふと死者を悼む感情が湧き上がってくるのが切ない。