映画:ペントハウス(監督:ブレット・ラトナー)


ベン・スティラーエディ・マーフィだし、もっとゆるい感じのコメディなのかと観に行ったのだが、意外に骨太な痛快復讐譚だったのは嬉しい誤算であった。復讐譚とはいえ血で血を洗うような凄惨ものではなく、搾取された金を取り返す頭脳戦なので『スティング』や『オーシャンズ11』のような、といえば判りやすいかもしれない。サスペンスもガチガチに固められてはおらず、ハプニングや登場人物の癖などを絡めながら臨機応変に綱渡りしながらの展開となるのが、かえってスリルがあっていい。
いわゆる億ション(死語)の裏側も面白かったな。観る前はもっとイヤミなセレブ生活を題材にしているのかと思ったら、煌びやかなお金持ちの生活を支えるサービス業の従業員が主役で、そもそもの発端も「年金を取られた」などと実に身につまされるところも好かった。ああそうさ、おいらもブルーカラーの貧乏人さ、ふかふか絨毯の上でシャンデリアが輝く表舞台より、ドアを一枚隔ててコンクリートむき出しの壁に裸の蛍光灯が光るひんやりした通路や裏の通用口のほうが親近感が湧く。仕事は一流、真面目に働きつましい生活。贅沢を望んだわけではないのだ、小さな幸せまで搾取されて堪るか。アコギな金持ちは制裁されてしかるべし。
しかしそこで働いていたからこそ判る警備の堅固さや馴れない犯罪行為に対する不安など、問題は山積み。それをひとつひとつそれなりに解決し仲間を増やし段取りを進めていくところもしっかり描かれる。引っ掛け裏切りハッタリいろいろあって、高層ビルでのアクションにまで行き着くのだが、はめ殺しの窓を割るんじゃなくてシーリングをピーッと取って丁寧にガラスを外すところが、庶民らしくてよかったな。