復活の奇跡

急に本を読み出して止まらない。縁側にちんまり座るおばあちゃんのようにのんびりゆっくり好きなように読んでいたのに、突然に加速装置が作動して過ぎ行く時間みたいに矢継ぎ早に読むようになってしまった。確か20年くらい前はこんな感じだった。貪るように本ばかり読んでいた。それから少し変節があってあまり読めなくなっていたのだけど、ここへきて久々の感覚に少々戸惑っている。なんだろな。別にどっちでもいいけど。
戻ってきたといえば、このごろ前髪が戻ってきた。仕事が殺人的に忙しかった頃、ストレスなのかなんなのか、おでこの生え際あたりが無性に痒くなってガシガシ掻いていたことがあった。鏡をじっくり見る余裕もなかったので、それで生え際が後退したのかどうかはよく判らない。ただそれから1年くらいたって、うぶ毛だと思っていたものががだんだん伸びて薄く前髪を下ろしたような感じになっているんである。こないだ美容院でそのことを訊いたら、うーん、後退した生え際が戻るってことは正直ほとんど考えられないんですけど、ストレスで外的な要因があったとすればあり得ないことではないですねー、と営業トークなのか本当なのか判断しにくい返事をもらったのだった。
エントロピーが極大に向かう局面にさしかかり、何かが発達の方向へ向かうなど基本的にはない後半生である。地味なことにも喜びを見出していかねば、なにもなくなってしまう侘しさよ。オヤジギャグやつまらない世間話というのはこうした心境から生まれるものかと実感するにつけ、あまねくことどもに妙に寛大な心持ちになっていくのであった。*1

*1:当社比。