読了:「失われた町」三崎 亜記

失われた町 (集英社文庫)

失われた町 (集英社文庫)

ある日、突然にひとつの町から住民が消失した―三十年ごとに起きるといわれる、町の「消滅」。不可解なこの現象は、悲しみを察知してさらにその範囲を広げていく。そのため、人々は悲しむことを禁じられ、失われた町の痕跡は国家によって抹消されていった…。残された者たちは何を想って「今」を生きるのか。消滅という理不尽な悲劇の中でも、決して失われることのない希望を描く傑作長編。

凝った設定なのでSFなのかと思ったら、そうでもなかった。消滅を免れても失われた人々を哀しみすぎたり心が囚われると「侵食」されたり、失われた町が残像と呼ばれる光を出すなど凝っているのだけど、なんなのかというとそういう設定です理由はありません、というものなのだった。もしくは理由がすべて情緒的な精神論に収斂していく。舞台も現代の日本に似ているものの過去の歴史が違うようなのだが、それで社会情勢や個人のメンタリティにどういう影響を及ぼすのかというと、みんな揃ってのほほんとしている。特に茜が。
町の清掃作業のくだりは好きだったのだが、人物が厨二全開な設定だったりで、ヤング向けなのかねぇ、という感じであった。