映画:夜のとばりの物語(監督:ミッシェル・オスロ)


ミッシェル・オスロ監督のアニメは三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーシリーズのDVDで初めて観た。シャープな輪郭で色彩の氾濫する背景に、影絵の人物が踊る。エキゾチックな物語が多く、背景のデザインもそれに合わせて豊かに変わっていく。中でもイスラム世界を舞台にした『アズールとアスマール』がとにかく美しくて気に入っていたので、劇場でこの予告を観かけたときには夢かと思ったのだった。
今回の『夜のとばりの物語』は、『プリンス&プリンセス』の形式を踏襲した短編オムニバスになっていた。ある劇場の中で中年男性と若い男と娘の3人がどんな物語にするか相談し、若い男女がその役割を演じるという趣向である。それぞれが短いため登場人物は少なめで単純なお話になっている。しかし内容はよくある子供向けに角を丸めてアレンジされた昔話ではなく、もっと残酷で不条理な暴力むき出しの民話の原典に近いような感触の物語が多い。知らない話ばかりだったけど、もしかしたらぜんぶ原作の民話があるのかな。
ふんだんに光を浴びたステンドグラスを観ているようだなと思ったのだけど、考えてみれば映像作品とはバックライトでフィルムの色を投影するものなわけで、もしかしたらこれが一番シンプルで非常に理に適った技法なのかもしれない。3Dで観たのだけど、もともとが影絵のような平面的な画であり、これが立体になるとどういうことになるのかと思ったら、背景と前景が何段階かに分かれて奥行きを出すようになっていた。その中で光が散るシーンなどは光の粒が縦横無尽に駆け回ったりする。幾何学模様と舞踊のような形のある動き。いってみれば少々動きの硬いCGアニメなのだけど、その利点を最大限に引き出している。やっぱりうっとりするほど美しい映画なのだった。
アズールとアスマール』の予告も貼っておく。これはいいよ。