読了『銃・病原菌・鉄 (上・下) 1万3000年にわたる人類史の謎』(ジャレド・ダイアモンド)

文庫化されてから買おう買おうと思いつつそのままになっていたのを、熊に先を越されて貸してもらい、やっと読了したのである。いやあ、面白かったね。食糧生産とそれに纏わる諸々はなんとなく薄ぼんやりと認識はしていたものの、ここまで明確にビシッと示されると「おお!」と合点がいく気持ちよさがある。
中でも一番感動したのは主にオセアニアに拡散した海洋民族の出発点が台湾であったというところだった。西はマダガスカルから東はイースター島、遥か北に位置するハワイにまでおよぶ民族拡散のことは何かで見聞きしたことがあって、でもそれは遠いロマンの夢物語のような感覚でいたのが、その出発点が割と身近な(行ったことはないけど)台湾だと聞かされると、急に悠久の歴史がいま現在生きている「ここ」と地続きに収斂する感じがしてゾクゾクする。
だいたい読書は電車の中か寝る前のひとときなのだけど、読んでいる間中、地球儀を傍らに置いてくるくる回しながら読みたくて仕方なかった。
こうした本のコンセプトを夢想する人は多いのだろうけど、実際に情報と知識をまとめて書けるとなるとある種の天才でなければ務まらないのだろうな。そう考えると非常に稀有な名著であるし、これを文庫で手軽に読めるとはなんと有難い世の中か。眼福でござった。