トランペットの音色は金色をしている。
心密かに「金色の味」と呼んでいるものを愛好しているのだが、これをなんと説明したらいいのか判らない。「黄金の味」なら焼肉のタレだが、それとは似ても似つかない繊細で玄妙な味なのである。15年くらい前にひとに頂いた紅茶が少し金属質でキラキラした透き通った風味でとても美味しかった。どこか外国のお土産だったこと以外、銘柄などはまったく覚えていないのだが、湯色が薄かったのでそれのイメージとない交ぜになって「金色の味」とインプットされたのかもしれない。
身近なところではかつを昆布出汁で炊いた冬瓜も、うっすら金色の味がする。単に目に見える色でそう言ってるだけのような気もしてこないでもないが、黄色い液体がなんでも金色の味かというと、断じて違う。こうと伝える術がないのがもどかしいが、なんだろう、喩えるなら血をうすーく伸ばしたような舌に染み入る味なのである。塩を入れる前のかつを出汁のような、渋みのない紅茶のような、純粋な旨味なのだろうか。普通のつゆでは塩辛くて風味が消えてしまうのでいけない。
あの紅茶はなんだったのだろう。しかしお茶の世界はちょっと調べただけでも奥が深すぎて、さっぱり見当がつかない。ひねりの入った刻んでいない茶葉ということしか覚えていないし、もう一度飲むことはないのだろうな。記憶はどんどん美化されて、幽玄なる滋味だったかのように思えていく。