映画:『LOOPER/ルーパー』(監督:ライアン・ジョンソン)


タイムトラベルものである。ガチでハードなSFではなくて、序盤で説明を求めるヤング・ジョーに未来から来たオールド・ジョーが「タイムトラベルについては話したくない!」とブチ切れるあたりがこの作品の立ち位置を象徴している。それについて話し始めたら1日じゃ終わらない。非常にややこしいことになる。
この映画が面白いのが、同一人物の現在形と未来形であるふたりのジョーの行動原理が違っていて、それに忠実に動いていくところだ。頑固さは齢をとっても変わらないんだな。ひとりの人間の加齢と経験によって考え方や物事の捉え方が変わっていく様をふたつ並べて比較することで若さと円熟が際立つ。
けっこう怖いのが、30年後の自分がタイムスリップしてきた影響で現在の若いほうが新たな経験をすると、未来のほうの記憶も書き換わっていくということだ。例えば指を1本落せば、30年間ずっと指が足りない人生を歩むことになる。指があったはずの記憶はなかったことになる。それでいくと‥‥と考え始めるとキリがないのでやめるが、世界線ってなんだろうねぇ。
しかし話はここに留まらず、更に膨らんで別の展開に奔っていく。若干パズルのピースが嵌らない部分もあるのだけど、伏線を回収すると次につながっていく息詰まるような緊張感があってとても面白かった。この映画での「現在」は近未来なのだが、いまと基本的に生活は変わらないのだけど道具がちょっとだけ便利になっていたりするのが、CGのような影のないつるっとした未来像ではなくて身体感覚を失わず地続きに泥臭いままちょっと年月が経ったらこうなる感じがして好かったな。