堕落する市民

今年はなんだかいつもの年より寒く感じる。我慢がならないのであたたかいニットが欲しいのだが、どうしてか薄っぺらいものばかり買ってしまう。厚みのあるローゲージだと編み物をするチャンスだと思ってしまうのだ。あああメリヤス地獄に嵌りたい。それでどう頑張っても自分で編む気など湧かないような目の細かいものをつい手に取っている。しかしいまの残業っぷりでちまちま編み始めたら、どれだけローゲージでも出来上がる頃には冬が終わってしまうだろう。そう熟考した私は厳しい現実から目をそらさず心を鬼にして、とうとうタスマニアウールのカーディガンをポチッとしたのだった。これが届いたら古くなったアレとコレを捨てるのも忘れてはならない。市民の良識ある生活は守られなければならないのだ。
そんなことをぼやいている裏でそろそろ本当に納期がヤバいので残業地獄に嵌っている。いい加減に仕事するの飽きた。グレたい。前向きな気分になれないまま、ずるずると仕事をしてるような遊んでいるような境目をわざと曖昧にするような感じで物事を進めている。すべてにおいてだらだらと、帰宅しても手製の炬燵に寝転んでスマホで本を読みながら寝落ちして、ストーブもなにもかも点けっ放しで朝を迎えたりしている。そうして自堕落なことをしてやったぞ、と後暗い悦びにほくそ笑んでいるのである。悪くなろうとしてもどこまでも安くてお手軽。取り返しのつかないことはしない、それが大人の小市民である。