- 作者: 魚川祐司
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/04/24
- メディア: 単行本
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それでもこの本を読んだら疑問に思うことはみんな同じなんだなぁとちょっと可笑しくなった。悟りが言葉で説明できないのはたびたび説かれているのでそういうものだという諒解があるからいいとして、ブッダは何故黙って死ななかったのか。これは自己の在り方と併せて非常に気になる部分である。
十牛図というのがある。禅の悟りの道筋を顕したものなのだが、悟った後はまちへ出て人々を導くことになっている。これがよく判らない。どうも私は布教というものにアレルギーがあるようで、進んでその道に入る人ならば良いのだが、どんなに素晴らしいことであってもその気のない向きにわざわざ説法してまで広めたいとは思えないのだ。もちろん煩悩まみれのこの身で考えることと、悟り澄ましてから至る結論は違うのかもしれない。しかし悟っていないいまはこのことを考えないではいられないわけで、道を極めるのと人を導き教える志向や才能はまた別のものではないのか。それとも他人を救いたいという欲求は天然自然に備わっているべきで、そんなふうに思う私は人として欠陥があるのだろうか。
この本によってそのあたりはなんとなく解答が与えられたようで、しかし今度はどうして解脱を求めるのかがますます判らなくなったりしたのだった。