映画:ベイビー・ドライバー(監督:エドガー・ライト)

エドガー・ライトの新作が出るよ、という話と、「ベイビー・ドライバー」が面白いよ、という話を別々に聞いたのである。そして頭の中でそれとこれとが繋がってなかったのである。映画館の席についてから隣の熊に概要を聞いて初めて判った。そうか、じゃあ気になってた2本がいっぺんに観られるじゃん。やった。(低脳

いい映画だったなぁ。音楽と映像が変態じみてマッチした実に楽しい映画である。と同時に、身も心も重くなるクソみたいな現実は音楽で蓋をして、なんとか身体を駆動させていく痛ましさの話でもある。いやこれは痛ましさではないのかもしれない。まともに見つめたら動けなくなってしまうような瑕疵は誰の心にもある。それだけで何か免罪符になるようなものではないと言っても、個人にとっての苦痛が和らぐこともない。しかしそれでも死ぬまでは生きていかねばならないわけで、だったら使えるものは使って出来るだけご機嫌に生きていったほうがいいじゃないか。
主人公の若者も良いし、相手役の女の子も非常にキュートで素晴らしい。流されるままに生きていた少年がシガラミにまとわりつかれてずぶずぶになりかけ、大事なものに魔の手が伸びそうになった途端にパキィ! と目覚めていく様がまた素晴らしい。やるときはやるんだよ。クライムムービーなんだけど、仲間のひとりが自信満々の勘違い野郎で無能な働き者が一番始末に負えないとかな、どこにでもいるのかこの手の奴は! みたいな部分が非常にエドガー・ライトっぽくて面白い。あと結末が最後まで描かれてあって救いがあるのがイマドキなのかな。頑張った報酬がちゃんとあるというのかな。ひと昔前だったら結末をここまでキッチリ描かなかったよな。
画面の中では主人公が聴いているiPodの音楽が背景の物音と呼応し世界が音楽に満ちている。現代のミュージカルってこういうことなのかもしれないなぁ。(コーヒーを買いに行きながらちょっと踊ってるし)