他人の趣味は他人の宗教

そういや「女の趣味は男の影響」ってな与太話を真顔でのたまうおっちょこちょいもいるねぇ。どうでもよすぎて鼻で笑っちまうけども、でもまあ確かに近くにいる人の影響は受けないわけもないよね。

映画を映画館でちょいちょい観るようになったのは熊の影響だな。それまではレンタルビデオ派だった。VHSテープを借りてきてひとりで夜に観るのは割と好きだった。田舎にいた頃、近所の大きめな本屋の一角でビデオレンタルもやっていて、場所柄か品揃えがそちらに偏っていたせいで往年の名画に凝ったことがあった。1990年代に20代だった私は1940~70年代の映画をそれなりに観た。感銘を受けたのはカサブランカと第三の男で、ストーリーが陳腐でも見せ方が上手いとこんな情感豊かに面白くなるんだなぁ、などと非常に不遜なことを考えていた。同時期にひとりで映画館に行くことを覚えて何本か観たっけな。理由は何であれあのときに履修しておいたお陰で今は映画オタクである熊の話にもそこそこついていけるので、怪我の功名というものである。あ、インド映画は完全に熊の影響です。

クラフトビールを飲むようになったのは熊が凝り始めたのが発端だが、自分も酒呑みだし一緒に楽しんでいるというのが実態だな。それに付随してザワークラウトやらソーセージやらレバパテやらヨーロッパ的な食のバリエーションから、燻製に凝り始めたのは確かだ。ピクルスも普通に作るようになったし、塊肉を塩漬けにして熟成させるのも当たり前になった。

本を読むのは家庭環境のお陰かなぁ。父はあまり本好きという感じではなかったが、母が読むのが好きだった。きょうだいも本読みでそれぞれが微妙にジャンルがずれているので長じてからは各自が買った本が家中に溢れてひと部屋をまるまる本部屋にした上で各自の部屋にも本棚があるというありさまだった。それを普通にして育ちストレス解消は好きな本を読むことというくらいの勢いだったので、本棚がほぼない家があると知った時はなにをして日々の時間を過ごしているのか単純に不思議だった。熊は元はSF読みで私はオールジャンルの古典寄り。SFに関しては熊のほうが断然詳しい。ラテン文学は私が好きだったのを熊も嵌って今では私より読んでるんじゃないかな。日本文学も読みますよ。お互いの好きなジャンルがずれているお陰で本の貸し借りが行われた結果、お互いに影響を及ぼし合っている。

車の運転は田舎なので必要だった。30歳過ぎまで地元にいて当たり前に車通勤していた。強いていえば苦ではなかったので適正はあったんだろう。免許を取って四半世紀、いまでも仕事で使いつつ連続ゴールド免許は伊達ではない。特別に上手くはないしスピードを出すことにも興味ないけど、最低ランクの軽バン*1からハイエースくらいなら気負いなく運転できる。トラックは微妙。あとMTは教習所以来乗ってない。

日曜大工のルーツは父だな。職業は気がついたら父の仕事と近いことをやっていたし。手芸や料理関係は母。料理上手だったし特に編み物は人に教える腕前だった。しかしなんでもかんでも作るようになったのは、なんでだろうなぁ。母によると子どものころから図工には異常な執着を見せていたらしい。自分では覚えてないんだけどね。三つ子の魂か。誰かの影響だけでこの狂気を続けられるもんではない気がしている。

仲間が楽しそうだと影響されることはあるな。もちろん興味の持てることだけだし、手を出すだけで続かないこともしばしばある。それは生きていれば普通のことだ。あと自分は興味なくとも人が楽しそうにしているのは基本的にいいものだよ。基本から外れるとアレなのは趣味の世界だけではないやね。なんにしても他人の趣味や生活を腐したり茶化したりする奴って、マジでうざったいよなー。そんな性悪なんか放っときゃいいんだよ、楽しんだもん勝ちだよ。

*1:出力もブレーキも弱い、ゆえに周りから舐められて危ない目に遭いやすい、安定性に欠ける、AT車の独特なギア切替のタイミングを読みつつ路面状況を鑑みてスピードを一定に保たなければならない等々、むしろ運転テクニックが必要。