燻製:豚ロース・砂肝


ワイルドな料理といえば燻製。もうもうと上がる煙、そいつに含まれる殺菌・防腐成分を食材に浸透させることで食品の保存性を高める調理法だ。難しいことは置いといて、ワイルドなサバイバルには欠かせないスキルである。
燻煙法は加工温度の違いにより三分類され、加工温度の高いものから熱燻、温燻、冷燻と呼ばれる。と、wikiに書いてあったんだぜ。
今回チャレンジするのは一番手軽な熱燻だ。燻煙時に食材が加熱調理される、つまり逆に言えば食品を加熱するオーブンの中についでにスモークチップを入れといて風味をつける、というぐらいの気分だな。長期保存には向かない調理法だから、注意が必要だ。ま、そんな心配しなくても、作ったらあまりのうまさにすぐに胃の中に納まっちまうけどな!

材料・道具

世の中には燻煙専用の器具ももちろん売っている。最近は手軽に出来るようにダンボール製のキットもあるし、それを自作しようと思えば簡単に出来るだろう。しかし、そこまで道具を揃えるのは今回の趣旨からは外れる。出来るだけ手軽に、余計なものは省き、なるべくあるものを活用して燻製を作りあげるのが目的だからである。というのは書きながらいま考えたが、こちらもしがないただの会社員だし時間も資金も情熱も限られているわけで、許される範囲で無理なく遊びたいんである。
とにかく今回はガスコンロの上で鍋を使う。
漢が使う鍋といえば、燃え盛る薪の上に置いてもヘイチャラな、シチューも出来れば鶏の丸焼きも作れるダッチオーブンに決まってる。
で、今回使うのはそれらを更に扱いやすく手軽にしたような、主婦の味方・無水鍋である。だって漢じゃないしウチにはそれしかないんだもん。一回こっきりのネタのためにダッチオーブンなんて高価で重くて嵩張ってあとから始末に困るもの、絶対買わないんだからね!(と自分に言い聞かせる)。
買い込んだのはスモークチップと鍋の中に敷く網と肉類のみ。

燻製と聞いてまず頭に浮かぶのが肉の塊。基本の豚ロースブロックと、ネットで情報を渉猟していて見かけたのがどうしても食べたくなったので、ついでに砂肝も。
スモークチップは百円ショップ:ダイソーで売っている。チップの種類には桜やらりんごやらヒッコリーやらいろいろあるが、今回はダイソーブレンドである。アウトドアショップやそれっぽいところで探せば木片をかためたデカい線香みたいなスモークウッドというものもあるが、熱燻にはチップがむいているらしい。

下拵え

肉に塩胡椒とその辺にあるグローブとかシナモンとかを適当に擦り付ける。塩分はそのまま冷蔵しても二〜三日は保つくらい。気温湿度その他の要件に遵って自己責任の目分量だ。どれくらいか判らなかったらお母さんに聞きましょう。味が染みやすいようにちょっと揉んでフォークで適宜グサグサしておく。

燻製の塩漬けには肉や魚をピックル液という液に素材を浸して数日〜2週間程度熟成させるソミュール法というのもあるが、これがウィスキーと塩と三温糖と醤油を煮て作るなど、ちと手間なんである。今回は保存目的ではないし本格的な燻製を作るというより、できるだけ簡単スモーク作りのつもりなので多少の味ムラは気にしないということで、直接擦り込んでしまう。
塩漬けした肉はラップでぴったり包み、ビニール袋に入れて出来るだけ空気を抜いておく。

このまま冷蔵庫で丸一〜二日くらい寝かせる。


**** 放 置 中 ****


二日後くらいに取り出したら、端っこを切り取ってレンジでチンして味見をし、塩辛かったら流水で塩抜きをする。

燻製だから多少しょっぱいくらいでいいだろうし、塩漬けも二日くらいじゃ真ん中へんと端っこの味の染み具合は違うだろうということを踏まえて、お好みで判断されたい。今回は表面を洗う程度で良さそうだった(あくまで適当な予測)ので、ザブザブ洗って引き上げる。

そしてキッチンペーパーで表面の水分を拭き取り、ザルに広げて今度は乾燥である。

ある程度乾いていないとうまく燻煙がのらないのだそうな。本当は軒先などに吊るして風通しの良いところで陰干しするといいらしいのだが、今は真夏である。ウチのベランダに干したら虫だの鳥だのが集まってきて、更にそれを捕食する猛禽類や野犬野良猫なんかも来ちゃったりして、阿鼻叫喚の即席ビオトープになりかねない。てか、網を被せてもGとかGとかGとかに集合されるのは厭だし、そんなにきっちり塩漬けにもしてないので連日の高温多湿で腐敗が始まる可能性も捨てきれない。
そんなわけで、またこのまま冷蔵庫で一晩くらい放置である。冷蔵庫内というのは基本的に乾燥しがちなことになっているが、最近の機能が充実したものなどは乾燥を防ぐ潤い冷蔵なんてのもあるので、お手持ちの冷蔵庫をよくご確認されたい。そしてザルに盛ったまま入れるので庫内が肉臭くなるが、そこは木炭でも消臭ゼリーでもお好きなものを突っ込んでおけば問題解決である。ウチは臭くなるに任せたがな。

燻煙

一晩乾燥させたら、いよいよ燻煙である。肉の乾燥具合は表面がべたつかない程度だ。
ヤニがべったりつくという話もあるので、鍋の内側にアルミホイルで内張りする。スモークチップをひとつかみ敷き、その上に肉を乗せる網を置く。

肉を乗せる前に鍋を火にかけ、スモークチップから煙が出るまで予熱する。が、思ったほど煙は出ず、木片の焦げる香ばしい匂いがしてくるので、それで見当をつける。

みっちり肉を並べたら、だいたい100℃くらいの温度でじっくり加熱するらしいが、ウチには調理用の温度計なんて洒落たものはないので、適当である。一時間くらいで火が通る程度かなとあたりをつけ、火加減は中の下くらいにした。

このまま二十分加熱。

砂肝は肉片が小さいので、これくらいで火が通る。爪楊枝を刺して確認したら、先に引き上げてしまう。なんとなく煙も匂いも物足りなかったので、この時点でスモークチップをザラザラ足す。
豚ロースブロックは更に加熱。

それから四十分後。

いい照りである。もっときれいに照りを出したい場合は、チップの上にザラメを置くといいらしい。
切ってみる。

ひゃっほぅ。

試食


極楽。
塩加減もちょい薄味で自宅で食べる分にはこれくらいでいいや。一晩くらい味を馴染ませるといいというが、このままでも充分イケる。


温度の関係なのか、思ったほど煙も匂いも出なかった。もっと温度が低ければ煙がたちこめるのかもしれないが、今回やった程度なら集合住宅でもまったく問題ない。正直、その辺を少し心配していたのだが、秋刀魚を焼くより匂いも煙も少ないかもしれないくらいだ。
ヤニもまったくつかなかったよ。

使用後の鍋。焦げてるのはスモークチップだけで、あとはきれいなもんである。