名代あんこう鍋 いせ源

新年会ということで、神田は創業天保元年の『いせ源』へあんこうを食べに行って来た。
老舗の目にも立派な店構えである。

行ったときには10人くらいの行列が出来ていたのだが、ちょっと並んだら割とすぐに入れたのだった。引き戸を潜ってみると、丸石を並べた広い三和土で半被を着た番頭さんが軽口を叩きながら履物の番をしている。小上がりはなんとどどんと一間四方くらいもある一枚板。奥に向かって傾斜している。しかし気取らず気さくな仲居さんたちが、和服姿でくるくると働いているのが実に気持ちのよい雰囲気である。
小ぶりの座卓が並んだ広い居抜きの座敷に通され、問答無用で「鍋がおふたり分ね」とちゃきちゃき言われる。はーい、おねがいしまーす。

鍋である。あんこうのあちこちと、ウド、銀杏、水菜、豆腐に絹さや。甘辛いシンプルな醤油味だった。どこの部位なのかよく判らないがぷりぷりもちもちの身が贅沢に入っている。

単品で頼んだきも刺し、煮こごり、唐揚げ、とも和え。どれもこれも美味い!
 
 
ビールで飲み始め、あとからお酒の燗をつけてもらうと、これがまた料理とよく合う。かーっ、たまらん! 相方さんともども気持ちよくなったところで、女将さんが作ってくれた雑炊をかきこむと、これがまた笑っちゃうほど美味しいのだった。
 
この女将さんがとても忙しそうなんだけども心配りがきめ細やかに行き届いていて、なによりとにかく始終にっこにこしているのが、本当に気持ちが良かった。本当の客商売ってこういうことなんだなぁ、と感歎したのであった。さすが老舗。
美味しいものを食べて飲んで、気分よく送り出されて、身も心もぽかぽかになって帰途についたのであった。


名代あんこう鍋 いせ源