映画:エンジェル・ウォーズ(監督:ザック・スナイダー)

金髪ツインテールの無垢な美少女がセーラー服で闘うお話である。
遺産を相続した少女が金を狙う義父のデブオヤジの陰謀で精神病院に入れられ、そこを脱走するためにアレコレするというのが筋の基本である。ただしストーリー運びは一筋縄ではいかず、精神病院に入ったとたん、そこは『劇場』であり入院している少女達はみんなダンサーという設定の空想世界が繰り広げられる。事務局の職員が『劇場』のオーナーであり、雇われているダンサーは半分売春婦でもある。ときどき市長など上客が通ってくる・・・・。
時代設定は1960年代らしく、このへんの設定が現実ではどうだったのかと考えると、小昏い薄闇に背筋がそそけ立つ心地がする。
主人公の少女をワケありで受け入れた事務局の職員は、義父から賄賂を受取り、記憶を抹殺するロボトミー手術を斡旋する。そこは『劇場』では富豪に売り飛ばされると改変される。
『劇場』で脚光を浴び周り中から賞賛される少女のダンスは、現実ではどんなことだっただろう。『劇場』でのダンスのように、精神病院内で共通言語として機能する自己表現といえば、喚き暴れ暴走することだろうか。それとも、最後の便所のシーンで表現されるようなことだろうか。
硬くひんやりした現実が、虐げられた少女によって柔らかく浮ついた夢へと醸成される。
しかし仕掛けはもう一段ある。少女がダンスを踊ると言いつつ、目を閉じて開けたらそこはバーチャルリアリティの世界である。瓦屋根の武家屋敷があり、巨大な落ち武者が迫り、火を吐く竜から宝石を奪う冒険のステージが用意されている。途中からは5人の少女戦士隊になり、ニーハイソックスにミニスカートを翻し、刀を振り回して縦横無尽に駆け回る。まさしくテレビゲームか魔法少女のノリである。自らの運命を変えるため、戦いを決意することで、次の扉が開くのだ。
・・・・ということなんだなぁ、とは思ったものの、2/3くらいで飽きてしまった。
空想だとしてもぽっと出の少女が踊ってみたらダンスの名手というのも唐突過ぎてついていけず、武器を手にしたらいきなり人並みはずれたアクションをみせるというのも意味が判らず、そもそも画面はこびがあまりにアクションゲームっぽくて、そっち方面に興味のない私には他人がプレイしてるゲーム画面を背後からぼんやり眺めさせられてるようで退屈だった。コスプレ美少女がキレイ可愛いというのも判るが、それだけで110分を楽しんで見続けるにはどうにもキビシイものがある。あと、個人的にビヨークが苦手というのもあるかもしれない。好きな人は好きなんだろうけどな、私には合わんかった。