DVD:スーパー!(監督:ジェームズ・ガン)


一般人が義憤に駆られて自前のコスチュームを身につけ、街に蔓延る悪と闘う。散々いわれているけども、型としては『キック・アス』とよく似ている。しかし『キック・アス』が毒の中にも爽快感があって、むしろそれが複雑な気分にさせられたのに対し、こちらの『スーパー!』は観終わったあとすぐに出てきた感想が「ハハハ、狂ってるわー‥‥(遠い目)」だったのだった。いや、よく考えてみると、狂っているわけではなくて逆に非常に現実的なのだな。画面運びはコミックっぽくなっているし、テンポ良くコミカルなのだけど、ひとつひとつの描写がとても当たり前に冷めてるんである。頭部を鈍器で殴れば血が飛び散るけど、大仰に噴出したりはしない。骨が折れれば激痛が走り立ち上がれない。それを愚直にバカ正直に描いているのである。だからこそ物凄く痛そうでもある。
狂っているのはどちらかといえば主人公も含めた登場人物である。いってみれば夢見る夢子ちゃんたちの暴走。
そもそも正義の味方ったって、地味でモテない男が女房を寝取られて自暴自棄になり、日頃の鬱憤が爆発しただけである。女房はアル中のヤク中で、ポン引きのチンピラに引っ掛かって男の下へ走った。でも現実を受け入れられず「そんなの間違ってる!」と叫んで自作のコスチュームを着て《クリムゾン・ボルト》と名乗った時点でどっか頭がオカシイが、その上でやったことが行列に割り込んだヤツの頭を大型レンチでボコボコである。正義の根拠はネットでたまに見かけるマナーを叫ぶひとと同等かそれ以下であり、対外的には興奮しすぎてキレちゃったただのアブない人だ。チンピラのほうがよっぽどまともに見えてくる。
相棒の少女になる《ボルティー》は若くしてセックス依存症らしい。これが可愛い顔してるんだけどチンチクリン。なのにエロいこと言って色仕掛けしようとする落差が、コミックにおけるセクシーギャルと現実のちょっと可愛い娘との間の超えられない壁を浮き彫りにする。率直にいってイタいというか見ていて哀しくなる類のアレである。更に興奮すると見境なくなって発狂しはじめるのだが、面白い以前にドンビキするような匙加減が非常に上手い。まさかあんなことになるとは、というタイミングも状況も絶妙だ。
最後はなんだか落ち着いて良い話のようにまとめているけど、なにも解決してないしむしろ悪化しているんじゃないかという気がするのだが、それでいいのか‥‥モノは言い様とでもいうのか、自分を納得させるために無理矢理落ち着けている感が満載である。最初から最後まで自画像がどこか身贔屓で見栄っ張りで歪んでいる、アナタやワタシのお話。
そんな感じで軽やかに容赦なくイタさを畳み掛けてくる。実に面白い映画であった。これを去年のうちに観ていたら、年間ベストに入れたかもなぁ。